THE REDFACE　PRODUCE VOL.72

ティファニーで朝食を２

フルコースブッフェ付きディナーショウ

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1961年の大ヒット作映画『ティファニーで朝食を』は、オードリー・ヘプバーンの愛らしさも相まって、当時も今もラブコメディーの代表作品として世界中から高い評価されています。勿論、私も10代の頃にこの映画と出会ってからずっとあの魅力的なオードリーファンの一人です。ですがあの本を書いたトルーマン・カポーティの原作は、この映画の印象とはかなりかけ離れていると私は断言できます。原作の背景にはもっともっとあの時代のニューヨーカー達の深い心の闇と、戦争という時代が生んだ排他的なイメージが描かれているのです。全編のそこかしこに洒落のきいた台詞が重なっていて私は正直この原作が圧倒的に興味深かったのです。映画を先に観てしまったことを少し後悔したのは何よりも作家の意図するテーマが違っていたからでした。映画の中のオードリー・ヘップバーンは確かにおしゃれで魅力的でそれはそれで素晴らしかったのですが。今に言い伝えられているようにカポーティはオードリーが気に入らなかったのは、彼が描いたはずのホリー・ゴーライトリーのイメージとはかなり違っていたからでしょう。なのにその違いの部分が逆に高く評価されてしまった。結果、カポーティが意図しなかった『ラブコメディー』として世界中に認められていったのを、かれはきっとかなり不名誉に彼は感じたのかもしれません。実際に本の中のホリーは幼い頃の不遇な時を経て心に大きな傷を負った飛べない鳥。そしてドクと出会って手に入れた安住の地は正に籠の中。でもそんな彼女はやがて自分の居場所を求めてニューヨークに飛びたって行ってしまった。そこで一匹の野良猫と出会います。ホリーはあえて名前を付けずに『キャット』と呼ぶのです。だってあなたにはもっといい場所が絶対にあるはず。そして『キャット』はいつの日かきっと、その場所を見つけるはず。・・・この『キャット』と『鳥籠』こそが、この『ティファニーで朝食を』の大きな二つのテーマなのです。本編の『キャット』は、ほんの少しの登場です。それもすっかり変えてしまったあの残念なラストシーンだけ。鳥籠に至っては一切登場しません。・・・何もかも飲み込んでしまう大都会ニューヨーク。幼い彼女はニューヨークが特別に気に入り、このきらびやかな中で成功を手に入れるためにどんなことをしてでも生き抜こうと決意したのです。田舎者の彼女はあっという間に退屈が嫌いな偏屈で鼻持ちならないパーティピープルに変身を遂げていきます。ホリーはまだ19歳。ですが『トイレのチップがないわ！』と嘯いて、男たちから一回50ドルもの大金を掠め取る女になっています。ホリーはきっと誰の目にも美しく、しかも会話も魅力的で大都会で洗練された勝ち組の女。でも決して誰も手に入れることができない女だった。・・・本を読む前はあまりしっくりこなかった『何か』が、本を読んですっかり明確になったのです。そう、ホリーはあの『ニューヨーク』そのものだったのです。・・・『この役、本当に難しい。でもこの難しい役をあの田中良子さんならできる！』私たちはそう確信して、スケジュール的に無理を承知でオファーしたのでした。その結果は予想以上でした。おかしな例えですが、完璧なホリー・ゴーライトリーが明らかに中目黒TRYに、私たちの目の前にいました。今回も皆様からの熱いアンコールにお応えし、前回同様田中良子さんとスケジュールをすり合わせました。あの大きな拍手は、原作者のトルーマン・カポーティにきっと気に入ってもらえた証拠です。お越しになれなかった皆様、今回はぜひお見逃しなく。今回も17歳のシンガー鈴木愛さんにも加わっていただきオープニングであの大人びた素敵な歌声で『ムーンリバー』をお届けいたします。またこうして田中良子さんと共演できることに心から幸せを感じています。人生を変える一作となりました。どうぞご期待ください！